一魁随筆 一つ家老婆
月岡芳年
すわっていた席からおもむろに立ち上がると出口のある方のふすまを開いた。
それから急いで土間へ下り、玄関の姿をかろうじて保っているガラス戸をきしませながら開いた。
背後から鬼婆に呼び止められはしないかと心臓は高鳴る一方だったが、何ごとも起こらなかった。
いや、背後の舞台ではクライマックスが演じられているはずだ……
☆NEXT
☆BACK