借金返済で弁護士に相談




6.  『S&M』  第5章  M



言いようのない恥ずかしさに身をつまらせ、
そこに、やるせなさすら感じて喘いでいるみずからを意識しながら、
真知子は、突然、眠りから目覚めました。
何がそのような思いにさせているのか、その理由がわかったとき、
彼女は、唖然としましたが、止めようとはしませんでした。
ふたつの手は、ネグリジェをはだけてあらわとなった乳房の上へ置かれて、
その愛らしい乳首を優しく揉みしだいていたのです。
そのようなはしたない真似をしてはいけないと気持ちは制しますが、
酔っているような気だるさに浸された夢見心地のもどかしさは、
むしろ、いっそうの刺激を求めて疼いてくるものがあったのでした。
切ないくらいのその疼きは、引き寄せるようにほっそりとした手を求め、
おもむろに片方の乳房から離れさせ、鳩尾をつたい、
お臍のあるなめらかな腹部の方へと向かわせるのです。
やがて、しなやかな指先は、ふっくらと茂る草むらへ触れました。
彼女は、思わず、ためらいを感じました。
ためらいは、もう片方の乳房へ置かれたままの指先を、
思いあぐねたときの女性がする、<の>の字を乳首の先端で描かせます、
したいと思うことができないのは、とても、じれったいことでした。
そのうちに、愛らしい乳首への愛撫が思った以上に熱心になっていて、
うん、うん、うんと甘く切ない声音がもらされている、自分に気づきました。
びっくりとなって、恥ずかしさで、両頬が火照り上がりました。
いけないわ、だめよ……
恥ずかしい……そのようなこと……
しかし、横たわらせた身体の方が、もっと火照っているように感じられると、
どうにもこらえられない気持ちが募ってくるのでした。
ほっそりとした指先は、柔らかな繊毛に覆われた小丘の割れめの縁へ、
恐る恐る、もぐり込んでいくのでした。
それは、ぞくぞくさせる悪寒のようでもあり、高ぶる疼きのようでもありました。
熱は帯びていました、
しかし、まだ、湿っているという感じではありません。
久しぶりですもの……
いや、絶えてなかったという方が正しい……
彼女は、敏感で可愛らしい突起へ、そっと指先を触れさせました。
ぞくっという鋭い疼きが突き上がり、驚かされました。
そのようにも敏感だったことが、何かとても嬉しく感じさせ、
優しく撫で始めることに、違和感などあるはずもありませんでした。
優しく、優しく、優しく、柔らかく、柔らかく、柔らかく、
指先で撫でまわし、こねりまわしていけばいくほど、
突かれるような鋭い疼きは、甘美な疼きをともなって広がってくるのです。
熱くなっていく思いの込められた愛撫は、
胸の方へ置かれた手をも促して、乳房を強く弱く揉み上げさせ、
火のついた女の官能を掻き立てるのに懸命とさせていくのでした。
やがて、乳首や可愛らしい突起が恥ずかしいほどにしこってくると、
彼女は、加えられる刺激に反応するあまり、
くびれた腰付きをくねらせて、やるせない身悶えを示しました。
女の芯から、悩ましく突き上がってくるような甘く切ない疼きが、
さらに、愛撫を夢中にさせていくのでした。
その留まることを知らない熱烈さには、
女であるがゆえのやるせなく切ない割れめも、熱くただれ始めたのです。
身に着けているネグリジェがもどかしくて、仕方ありません。
彼女は、思い切って、ネグリジェ、ショーツ、
何もかもを脱ぎ捨ててしまいました。
ベッドの上へ、生まれたままの全裸を晒してしまうと、
ことのほか、気持ちまで大胆になって、
みずからを高ぶらせる行為が自然なことにさえ思われるのでした。
いや、その気持ちのよい快感は、それ以上を望ませるのが当然のことであり、
行き着かない喜びなど、不自然極まりないことのように感じられるのでした。
雪白の優美な全裸を青いシーツの上へさらけ出して、
そのあられもなく恥ずかしい全裸の姿が快感を高ぶらせるものであるから、
お気に入りなのですといった耽溺する思いで、
乳房を揉み上げては、乳首を撫で、クリトリスをつまんでは、
乳首をこねまわし、クリトリスを撫でまわしては、乳房を揉みしだきを繰り返し、
やがて、熱くなった羞恥の割れめが震えをあらわしたとき、
あ〜んと悩ましい声音をもらさせて、美しい顔立ちが火照り上がるのでした。
大して知りもしないことでしたが、
まるで、ポルノ女優が行っているようなオナニーみたいだわと感じると、
いけないことをしているという思いがよぎりますが、
恥ずかしい思いは、ますます、恥ずかしさを求めさせるです。
愛撫する指先をやめさせるなど、もってのほかのことでした。
羞恥の花びらがやるせなく膨らんで、
ついに、こらえ切れなくなったように、花蜜が滲み出してきました。
そのぬめる熱い感触を指先に感じたとき、
彼女は、もう、そこで終わりにしたいという後ろめたさを感じました。
しかし、思いはいざ知らず、
官能は、中途半端に終わることを断じて拒んでいました。
めくられたように開かれている花びらは、
その内奥へ差し入れられるものを、今は遅しと待ち構えているのでした。
指先は、なだめるように、
鮮烈な内奥へと向かうとば口を撫でまわしていましたが、
そのようなことで、我慢させられることではありません。
むしろ、撫でまわされる気持ちのよい甘美な疼きは、
うう〜んと駄々をこねるような声を上げさせ、
うっ、うっ、うっと悩ましいうめき声をもらさせ、
揃えさせた二本の指先を沈み込ますように、促すばかりのことでした。
大丈夫かしらという一瞬の不安がよぎりますが、
彼女がためらわなくても、女のやるせなく息づいている内奥は、
そろそろと差し出される指先を、求めていたように、含み込んでいきました。
その強い吸引には、彼女自身も、びっくりとさせられたくらいでした。
差し入れられた指が何もしないでじっとしていることを、
呑み込んだ悩めるばかりの深奥は、許しません。
緩やかな収縮をもって、うごめかせる指先を勢いづかせていくのです。
それは、とても気持ちのよいことでしたが、恥ずかしいことでした。
でも、恥ずかしいということは、気持ちのよいということなのでした。
余りの気持ちよさに、こらえ切れないとでも言うように、
生まれたままの全裸をよじらせてはくねらせして、
しなやかに伸びた両脚をやり場のないように、悶えさせていくのでした。
激しくうごめか始めた指先と、吸引と収縮を繰り返す肉とのせめぎ合いは、
女の清楚で愛くるしい顔立ちを美しく歪ませ、
あん、あん、あんと切なく甘美な声音を上げさせながら、
官能を煽り立て燃え立たせて、一途に高ぶらさせていくのでした。
もう、昇りつめるところしか、向かうところは、あり得なかったのです。
夢中になって、耽溺しているばかりの彼女にとって、
あられもないみずからの姿態を覗いている者がいることなど、
まったく想像もつかないことだったのでした。
ベッドの上で嬌態をあらわとさせる一糸まとわぬ女体の妖美を、
きちんと締め切られていなかった寝室の扉の隙間から、
食い入るようなまなざしを投げかけ続けるひとりの男性があったのでした。
恍惚となる快感へ向かおうと、
あ〜ん、あ〜んと悩める泣き声を上げながら、
柔らかで艶やかな髪を打ち振るい、優美な裸身をのた打たせながら、
真知子は、昇りつめようと懸命になっていました。
青いシーツの上へ、雪白の輝きを放つ、しなやかな全裸を右に左にくねらせて、
あと一息で頂上というところへ達したときでした。
突然、寝室の扉が蹴り開けられて、男性が入って来たのでした。
びっくりした真知子は、思わず、その方へ眼をやりました。
びっくりは、驚愕にまでに膨らんで、動作を凍りつかせるほどのものでした。
夫の新一が立っていたのでした!
どうして! どうして! どうして! 亡くなったはずの主人が!
真知子は、混乱と驚愕と恐怖さえ感じて、唇をわなわなとさせるばかりで、
考えるどころか、声を上げることもできずに、
ただ、うろたえながら、生まれたままの全裸を震わせるばかりでした。
いつもそうであったように、夫の新一がはっきりとした答えを出しました。
新一は、妻の前へ仁王立ちになると、吐き捨てるように言ったのです。
やはり、そうだったんだ!
きみの本性は、はしたない、浅ましい、不埒な女だったんだ!
ずっとぼくを欺き続けた、卑劣極まりない、売春婦だったんだ!
ぼくの前では 一度も見せたことのない
快感に酔い痴れる、喜びあふれた、その美しい顔立ちの表情!
それが何よりの証拠だ!
ああっ、ぼくは、何て馬鹿だったんだ、心から愛していたのに!
きみの、嘘の、偽りの、でたらめを、愛だと信じ続けていたなんて!
真知子は、詰まらせた咽喉から、搾り出すような声音で叫びました。
そっ、そっ、そんなっ! 嘘です! 偽りです! でたらめです!
私があなたを欺き続けていたなんて!
だが、夫は、まるでその言葉が聞こえてないようにと言うように、
いま見ているありさまがすべてを物語っているという睨みつけるまなざしで、
妻を見やるばかりでしたが、そのとき、気が付いたのです、
夫の手に握られているものを! 麻縄の束を!
そして、それが意味することに説明は要らないと言わんばかりに、
夫は、勇んでベッドへ上がってくると、強引な力で妻の全裸をねじ伏せ、
ああっ、いやです、いやです、やめてくださいと懸命にあらがう声音を無視して、
ほっそりとした両腕を背後へまわさせ、華奢な両手首を重ね合わせると、
後ろ手に縛ったのでした。
それは、大きな衝撃でした!
夫に、縄で縛られた! しかも、全裸の姿を!
けれど、そればかりではなかったのでした。
夫は、更なる麻縄を使って、ふっくらとした乳房の上下に胸縄を、
掛けられた首縄から下ろされては、それに絡められて、
腰付きのくびれを際立たせるように締め込まれていったのです。
どうして! どうして! このようなことをと疑問が逆巻き続けるなか、
無理やり開かされた両脚へもぐらされた縄を、
女の羞恥の割れめへ埋没するように、しっかりと掛けられたのでした。
真知子は、衝撃に打ちのめされて、茫然となったまま、
緊縛された全裸の姿態を横座りとさせるばかりでしたが、
きみに、いつまでも、夫婦のまことの愛のしとねに、いてもらいたくない!
夫からそのように言い放たれて、強引に立ち上がらされると、
縄尻を取られ、引き立てられるようにされながら、
寝室を追い出されていくのでした。
それから、廊下を歩まされて、向かわされたのは、
息子の新一の自室だったのです!
真知子は、込み上がってくる涙をあふれ出させながら、
夫の方へ、懸命の哀願の表情を浮かべて、
それだけは! それだけは! いやっ! 許して、許して、あなた!
必死なって訴えかけましたが、聞く耳は持たれませんでした。
息子の部屋の扉が大きく開かれて、
真知子は、もう、顔立ちを俯かせるばかりで、
生きた心地がしませんでした。
しかし、聞こえてきたのは、別の男性の声でした。
新一君、ようやく来たね、待ちかねていたよ。
その聞き覚えのある声音に、真知子は、恐る恐る、顔立ちを上げました。
息子の姿は、影さえもありませんでした、
代わって、あったのは、某国会議員のご子息、
親友の翔子さんの旦那様だったのです。
真知子は、びっくりしました、
しかし、それ以上の驚愕があったのでした。
ご子息の手に握られている麻縄の垂れた先には、
花嫁の純潔をあらわす純白のウェディング・ドレスもまぶしい、
翔子さんが後ろ手に縛られ、
胸縄を掛けられた姿で寄り添っていたのです。
彼女は、真知子を見るなり、慌てて、顔立ちを俯かせてしまいました。
どうして! どうして! どうして!
真知子は、めまいさえ覚える混乱にありました。
新一君の縄掛けも巧みなものだね、
真知子さんのふっくらとした、美しい恥丘が盛り上がるほどの股縄だ!
よかったら、翔子のも見てやって欲しい、なかなかのものだと思うよ。
そう言うなり、ご子息は、妻のドレスの裾をたくし上げるのでした。
翔子さんは、顔立ちを俯かせて、されるがままになっているだけでした。
あらわされた雪色の下半身は、真知子のものと同様に、
優美な腰付きのくびれを際立たせるように巻かれた腰縄から、
縦に下りて、股間へともぐらされた縄が締め込まれていました。
ただ、翔子さんの羞恥の翳りは、綺麗に奪われていて、
剥き出された小丘の白いふくらみが鮮やかとなるくらいに、
埋没させられた麻縄の淫猥が漂っているのでした。
夫の新一は、感心したように、思いを述べていました。
素晴らしいね! 女の淫らであることが、あからさまに理解できるね!
真知子のも、陰毛を剃り上げた方が効果的になることは、間違いない!
ふたりのどちらが淫猥であるか、競い合わせたいな!
ふたりとも、同じように淫らであることは、分かり切っていることだが!
それに答えて、ご子息は、吐き捨てるように言ったのです。
そりゃ、そうだ! このふたりは、大の親友で、大の仲良しだ!
亭主などそっちのけという、はしたくも、浅ましい、不埒な女たちなのだ!
ぼくたち夫婦に子供ができないのは、
翔子が男からされる妊娠を拒んでいるからだ!
このような女を妻とした男の馬鹿さ加減は、悔やんでも、悔やみ切れない!
夫たちが語り合っている間も、翔子さんは、最初と同じで、
打ちひしがれたように、顔立ちを俯かせたままでいるだけでした。
真知子にも、顔を会わせることさえ羞恥の極みで、耐え難いことであったのに、
声を掛けられる余裕などあるはずもなく、同じようになるばかりことでした。
新一君の言うとおりだ!
ふたりのどちらが淫猥であるか、競い合わせる、ふたりだけの女の世界!
それが、この女たちにとって、最もふさわしい身上と境遇だ!
ご子息は、そのように叫ぶと、翔子さんの縄を解き始めました。
真知子の夫も、同様のことを始めたのでした。
翔子さんは、縄を解かれたばかりでなく、ウェディング・ドレスも脱がされて、
下着も取り去られていくのですが、まるで観念したように、
あらがう言葉さえなく、ご主人から、されるがままになっているだけでした。
ふたりの妻は、共に、指輪も、ネックレスも、ピアスさえない、
拘束される縄もない、一糸もつけさせられない、
生まれたままの全裸で、その場へ立たせられましたが、
それは、動物扱いされたということでした。
何故なら、部屋の片側に、鋼鉄製の柵も頑丈な檻が置かれてあり、
そのなかへふたりは入れられ、
がっちりとした錠を下ろされたのです。
それから、ご子息は、夫の新一の肩へ手を掛けると、
今度、うちの父は大臣になる予定だから、新一君にも、正式に紹介する、
君の仕事の便宜がはかられれば、君にも、有利になることだと思う、
そのように話しながら、扉をばたんと閉めて、
部屋を後にしていくのでした。
厳しい鋼鉄製の檻のなかへ残された、女ふたりだったのです。
打ちひしがれた思いになるだけで、考えがまったくまとまりません。
真知子は、両手を冷たい床へつきながら、横座りとさせた全裸を震わせて、
込み上げてくる涙を抑えきれずに、泣きじゃくるばかりでした。
それとは正反対に背を向けて、同じような姿勢になっている翔子さんも、
なよやかな両肩を震わせて、すすり泣いているのでした。
ふたりは、大の親友で、大の仲良しです。
考えることも、すぐにひとつにまとまり、行うことも、すぐに一緒にできました。
結婚だって、翔子さんを追うように、真知子にもできたことでした。
翔子さんは、残念ながら、まだ、子供ができませんでしたが、
真知子には、すぐにできましたが、夫には死に別れました。
何があっても、ふたりは、大の親友で、
大の仲良しであることに、変わりがなかったことでした。
真知子は、そのように、ずっと考えきました、
翔子さんも、同じように、ずっと考えてきたことのはずです。
ですから、ふたりが、ここに、こうしていることは、
大の親友で、大の仲良しであれば、
不思議でも何でもないことであったのかもしれません。
ふたりは、考えることもひとつ、行うことも一緒なのです……
ひとしきり泣き終わると、真知子は、翔子さんと一緒にいることが、
不思議でも何でもないことであるばかりか、相手の裸の背を見つめていると、
その雪白に輝く柔肌が大の仲良しのいとおしさとして、感じられるのでした。
翔子さん、もう、泣かないで……
真知子は、そのいとおしさへ、優しく声を掛けるのでした。
翔子さんは、おもむろに、真知子の方を振り返ると、
波打つ艶やかな黒髪に縁取られた端正な顔立ちをしっかりと見せました。
それは、はっとさせられるくらいに綺麗であったことは、
翔子さんも、真知子を見つめて感じたことと、一緒のようでした。
真知子は、思わず、ほっそりとした手を相手に差し伸べました、
すると、翔子さんも、すぐに手を出して、それを取ったのです。
ふたりは、大の仲良しで、考えることも、すぐにひとつにまとまるのでした。
翔子さんがかすかな笑みを浮かべました、真知子も微笑みました。
真知子は、手を握り締めました、翔子さんも、握り締めました。
翔子さんが裸身を摺り寄せれば、真知子も摺り寄せました。
どちらからともなく、相手の肩へ手を置いて、引き寄せるようになれば、
互いの顔立ちは、間近となるばかりのものでした。
真知子は、ためらいませんでした、翔子さんも、躊躇しませんでした。
ふたりの綺麗な形の唇は、優しく重ね合わされていったのでした。
求め合うことが一緒であれば、求め合うことはひとつになるだけです。
真知子には、大の仲良しで、大の親友である翔子さんが、
掛け替えない相手であるとしか、思えないことでした。
翔子さんも、それは、同様に感じていることであるからこそ、
触れ合わせていた唇の柔らかな感触以上のことを求めるように、
真知子の唇を割って、甘い舌先を差し入れることをしてきたのでした。
真知子にも、それは望むことでした、差し入れられた甘美な舌先へ、
みずからの舌先をからめ、もつらせ、くねらせることは、
同じ思いにある相手を、同様にさせることにほかならなかったからでした。
真知子が舌先を含み込まされて、官能を掻き立てられれば、
今度は、翔子さんが舌を差し入れられて、官能を煽り立てられるのです。
真知子は、じっとなっているのがもどかしく感じられて、
相手の美しい乳房へ手を触れて、揉み始めました。
翔子さんも、負けじと、真知子の可憐な乳首を指先で愛撫し始めました。
ぴったりと重ね合わせた唇と唇は、舌先の熱烈になった絡ませ合いから、
口端から、よだれのしずくを落とさせるほどになっていましたが、
抱き締め合った裸身を、鋼鉄製の檻の床へ、
なし崩しにさせていったことでもありました。
ようやく、唇を離させたふたりでした。
顔立ちを紅潮させながら、互いにじっと見つめあって、微笑みを浮かべると、
今度は、横たわらせた生まれたままの優美な全裸を、
翔子さんが先になって、頭と脚が逆さになる体勢とさせていくのでした。
艶やかな太腿を押さえられ、されるがままに開かされていく美脚は、
互いの女の羞恥である割れめをこれ見よがしとさせて、
顔立ちを埋めさせるのに、これほどのいとおしさはないというほどに、
女の愛らしさを芳香のように匂い立たせているものでした。
真知子にとってみれば、羞恥の翳りをすっかり奪い去られた相手のそれは、
ふっくらとした柔和に深々とした亀裂の走る、愛くるしいくらいの可憐さで、
いずれは、翔子さんと同じになりたいと思わせるものでした。
花びらをぱっくりと開かせた女の割れめにある、
敏感で可愛らしい突起、花蜜をあふれ出せた鮮烈な深奥、
慎ましいすぼまりを見せる菊門、これらへ火照った顔立ちを埋めて、
高ぶらされる官能のままに、掻き立てられ、煽り立てられ、
燃え上がらせられ、向かうべきところへ向かわせられていく快感、
気持ちのよい最上の喜びへ昇りつめることも一緒であるとひとつになって、
冷たい檻のなかで、雪白の全裸を絡ませ合ったふたりの女は、
柔らかな唇と尖らせた舌先と軽い歯を使った愛撫に、熱烈となるのでした。
やがて、ねっとりとした花蜜をとめどもなくあふれ出させて、
燃え上がらせられた疼きまくる官能から、口で行う愛撫もままならなくなり、
ああん、ああん、ああんという、
悩ましく甘美な泣き声を交錯させるばかりの女たちは、
びくんとした硬直をあらわとさせると、
花蜜に濡れた艶やかな太腿をぶるぶるとさせながら、
女の羞恥の割れめにある鮮烈な鮭色の肉奥を吸引と収縮にひくつかせて、
快感の恍惚へと昇りつめていくのでした。
それは、この上のない気持ちのよさでありましたが、
悪寒に震えるくらいの恐ろしさを感じさせるものでもあったのでした。
寝室のベッドの上で、青いシーツに身を横たえて、
夢から目覚めさせられた真知子にとって、
大きな瞳を大きく開かせて、早く現実を確かめたい、
そう感じる以外になかった、
悪夢であったのでした……
私は、翔子さんとは、大の親友で、大の仲良しです、
それは、本当です、
しかし、私は、レズビアンなんかではない、翔子さんもそうです!
断じて、そのようなものではない!
これまで、息子ひとりのためだけにやってきたのは、
男性を愛せなかったからでは、決してない!
息子を愛していたから、
最も愛する夫を亡くしたからだわ!
本当だわ! 本当よ!
真知子は、最後の言葉を寝室に響き渡るくらいの大声で、
叫んでいました。
それから、思い立ったように、身体を起こすと、
はだけたネグリジェ姿のままで、
ふらふらと寝室を出て行くのでした。
そして、新一にひと目会いたいという一心で、
息子の部屋へ向かうのでした。
新一の部屋は、廊下の反対側にある距離です。
けれども、暗澹とした廊下は、
行けども、行けども、
終わりがありません。
ようやく、突き当りとなって、行く手が塞がれました。
そこには、開けようと思う者にしか見えない、
頑丈な鋼鉄製の扉があって、
その鍵もまた、
望む者にしか手にすることができないものとしてあるのでした。
真知子には、その双方の思いがありましたから、
そのなかへ入ることができました
鉄製の螺旋階段が下方へ伸びていて、
地下深いところはまったく見えません。
真知子は、ためらいもなく、注意深く、下へ降りていくのでした。
降りていくにつれて、光の粒子が泡のように立ち昇ってくるのが感じられ、
地下へ降り立ったときは、暗黒の世界でありましたが、
一箇所から、ぼおっと光り輝くものが見えるのでした。
まばゆいばかりの光として感じられ、
くらまされた眼は何も見ることができませんでした。
やがて 眼が慣れてくると、
真知子の前には、
白木の十字架が堂々とそそり立っていることがわかりました。
それが何を意味するものであるか、
真知子には、
理解できることでした……



☆NEXT

☆BACK

☆九つの回廊*牝鹿のたわむれ



inserted by FC2 system