第3章  縄の思い出 森川麻子の回想(1) 借金返済で弁護士に相談
          第3章  縄の思い出 森川麻子の回想(1)





私とケコちゃんこと神沢圭子さんは、親同士が「縛って繋ぐ力による色の道」の信奉者だった関係で、小さな頃から一緒に遊ぶ幼なじみでした。
 圭子ちゃんのお父様である晃一郎先生は、いろいろな修行や研修を通じてレベルの高い緊縛術を習得されていて、地位の高い方でした。
 私にとって晃一郎先生は、多くの経験をさせていただいた大切な方です。

 私たちは親が「色の道」の儀式をしている間、一緒に遊んでいました。
 圭子ちゃんの家は私の家から自転車で20分くらいの距離で、小学校に上がる頃から、お互いの家を訪ねるようになっていました。

 学校が早く終わったある日のことです。私は圭子ちゃんと遊ぼうと思い、家を訪ねました。いつものように自分で門を開けて敷地に入ると、圭子ちゃんが「色の道」の儀式を行う「道場」へ向かっていくのが遠くに見えました。
 なんだか圭子ちゃんは見つかるのを恐れているような感じで、私は喉から出かかった「圭子ちゃん!」という声を、とっさに飲み込んでしまいました。

 親たちが儀式をしている間、「道場を覗いてはダメ」と言われていました。
 儀式の間に大人たちが何をしているのか、もう少し大きくなるまでは知りませんでしたが、親たちのいない時間にこっそり道場で遊んでいたことは何度かありました。
 圭子ちゃんが一人でこっそり道場で遊ぶのだと思い、私も道場に向かい、少しだけ開いていた窓の隙間から覗いてみました。
 信じられないことに、圭子ちゃんは裸でした。そして、天井から床まで垂れ下がっていた縄を両手で握り、その上に跨がって股間を押し付け、腰を前後に動かしていました。
 私はなんだか、見てはならないものを見てしまったような気がしました。
 少し離れて見ていた私にも、圭子ちゃんの荒い息が聞こえました。
 私は圭子ちゃんよりも精神的に幼くて、何をしているかはわかりませんでした。でも、苦痛を感じている様子はありません。「女」になった今だからわかりますが、気持ち良かったんだと思います。
 腰の動きが次第に早くなっていって、何か口走っていました。私には言葉として理解出来なくて、圭子ちゃんの気が狂ってしまったかのようでした。
 何往復かすると、「アーッ!キモチイイッ!」という声を上げて、身体の動きが止まってしまいました。上半身を後ろに反らし、腰を突き出したままの姿勢で……。
 その時、不思議な光景を見ました。
 わけのわからないことを圭子ちゃんが口走っている時、身体全体が「ボーッ」と白い光を発しているようでした。そして、「キモチイイッ!」と叫んだ瞬間、その光が圭子ちゃんの身体を離れ、宙に1メートルぐらい浮かんだように見えたのです。そして、間もなく再び下りてきて圭子ちゃんの身体に戻りました。
 あれは圭子ちゃんの魂だったのでしょうか。私には時々、こういう不思議な光景が見えてしまうのです。

 あの日の圭子ちゃんの裸、私にはすごくきれいに思いました。圭子ちゃんは今でも胸がなくて(ケコちゃん、ごめん!)、あの時はもちろん真っ平らだったけど、裸になった身体がお姉ちゃんらしく見えたのです。
 今でも私は、圭子ちゃんの裸が好きです。

 その後、私はなんとなく圭子ちゃんに声がかけづらくて、こっそり道場を離れて家に帰りました。
 そして、あの日私が圭子ちゃんを見ていたことはずっと内緒にしていました。圭子ちゃんがしていたことの意味を私が理解するまでには数年の歳月が必要でした。



                      (2018年6月18日 脱稿)





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