通路を曲がったところに待っていたのは、子供のように背の低い双子のピエロだった。 ふたりは仲良く手をつないで、どちらがどちらとも見分けがつかず、 ただ、その身にまとう衣装の違いが「二人いること」をあらわしているという感じだった。 そのうちの赤い身なりをしたピエロが口を開いた。 「お嬢さん、いらっしゃるのをずっとお待ちしていました」 もうひとりの青い身なりをしたピエロも続けて言った。 「お嬢さん、いつかは見えられるものだと首を長くしていました」 ふたりは同時に頭を下げて言うのだった。、 「あなたの誕生日を祝うパーティへようこそ、みな、あなたを歓迎していますよ、 あなたが主役なのですから……」 「そうですわ、あなたが主役なのですから、もっとくつろいだ格好をなさったら、 そんな縄で縛られているみたいな窮屈な姿などやめて……」 突然、背後からひとつの女性の声が呼びかけた。 Yは思わず振り返った。 |
そこには、ベージュとシルバーのドレスを身にまとった双子の女性が立っていた。 ふたりは笑顔を浮かべながら口を開いて語りかけた。 「身にまとっているものは同じように見えても、ひとはそれぞれに違うものですわ」 ひとつの声に聞こえるのは、ふたりが同時にしゃべっているものだった。 「私たちはいつも一緒にお話していますけれど、ふたりを間違われたことはありません。 そりゃそうですわね、私たちはまったく別のふたりなのですから。 お嬢さま、如何です、あなたには私たちが同じに見えて? もし、見えるとしたら、あなたがそのような格好をなさっているからですわ」 Yには、ふたりは衣装だけ異なるだけで同じにしかみえなかった。 それに、そのすましたような言い方が少し気に入らない感じがした。 「それでは、私が後ろ手に縛られている縄をあなた方が解いてはくれませんか」 Yはふたりの同じ顔を見比べながら、挑むような語調で問いかけた。 すると、笑い声がひとつ、それに答えた。 「ほ、ほ、ほ、ほ、ほ……、 何をおっしゃいますの、私たちは見てのとおりの人形ですわ。 人形の私たちに、人間であるあなたをどうできるとおっしゃいますの。 ほ、ほ、ほ、ほ、ほ……、 あなたが人形にでもならないかぎり、私たちにはどうすることもできません。 あなたは、ご自分の力でそれをなさるほか、ないのではないのですか」 Yは身動きしない人形を前にして、みずからの不自由さがたまらなくもどかしかった。 「さあ、お嬢さま、あなたが主役の誕生パーティへ向かいましょう、ほ、ほ、ほ、ほ、ほ」 ふたりの女性は楽しげな笑い声を響かせた。 「そうです、みながお嬢さんを待っています」 双子のピエロの青い身なりが言った。 「いや、お嬢さんがみなを求めています」 子供のピエロの赤い身なりが続けた。 Yはその通路の先にある場所へ行かなければならないと思うのだった。 |
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